アノード酸化反応の電流密度は、皮膜内部の電場強度eに対して指数的に増加することが知られている(Fig. 4a)。ここでAは交換電流密度や活性化エネルギーに関係する量であり、Bは皮膜の活性化距離に関係する量である(Table 3)。
このような反応機構は高電場機構と呼ばれ、Guntershultz電流密度は電場強度の指数に比例(高電場機構)1)や Mott金属酸化の理論2)によってアノード酸化皮膜の生成機構として古くから検討されてきた。 (4)式におけるA,B と、(2)式におけるkによって、高電場機構による皮膜生成の電流-電位曲線は、完全に記述できる。そこでこれらの値を高電場機構の反応パラメータと呼ぶことにする。(3)式と(4)式より得られた(5)式に示すように、電流密度の対数は(電位上昇速度/電流密度)は比例し、その勾配と切片は高電場機構の反応パラメータと密接な関係がある。
電場強度の逆数をアノダイジグレシオという。
電界の強さ E 〔V/m〕
式量 FW 〔kg/mol〕
電流密度 J 〔A/m²〕
酸化アルミニウム3)
- (1) 電流密度は電場強度の指数に比例(高電場機構)
A. Gunterschulze, H. Betz, Z. Phys.,92,367(1934). - >
- (2) 金属酸化の理論
F.Mott, N.Cabrera, Rept.Prg.Phys.,12,163(1948). - >
- (3) 酸化アルミニウム, Aluminum Oxide, Al2O3, = 101.9612 g/mol, (化学種).
- >
アノード酸化反応の電流密度1)は、皮膜内部の電場強度2)に対して指数関数3)的に増加することが知られており、それを高電場機構といいます。
高電場機構でバリア皮膜を生成するバルブメタルの皮膜膜厚と電圧の比です4)。水溶液中でアルミニウムをアノード酸化した場合は約1.4nm/Vです5)。有機電解液中では1.75程度になります6)。厳密には温度と電流密度に依存します。電解コンデンサの耐電圧7)と静電容量と密接な関係があります。
【関連講義】卒業研究(C1-電気化学2004~),不働態皮膜の生成機構8)
(
1) 
電流密度(
current density)
[
アンペア毎平方メートル].
(
2) 
電場(
electric field)
[
ボルト毎メートル].
(
3) 
指数関数, 
図形.
(
4) 
バルブメ >
アノダイジングレシオ、絶縁性、耐電圧、漏れ電流,
バルブメタルのアノード酸化立花 和宏,
固体電解コンデンサの耐電,
講義ノート, (
2005).
(
5) 
>
4.4.1タンタルの陽極馬場宣良,
電解法による酸化皮膜, 槇書店, (
1996).
(
6) 
リチウム電池駆動用電解液中におけるアルミニウムの不働態化立花和宏、佐藤幸裕、仁科辰夫、遠藤孝志、松木健三、小野幸子,
Electrochemistry, Vol. 69, No.9, pp.670-680, (
2001).
(
7) 
耐電圧(
withstand voltage)
[
ボルト].
(
8) 
結果と考 >
論文・報 >
刊行物@ >
リチウム >
不働態皮膜の生成機構,
リチウムイオン二次電池アルミニウム集電体について(2003)仁科 辰夫,
卒業研究(C1-電気化学,
講義ノート, (
2003).