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題目 | マデリング定数とBorn-Haber cycleについて教えてください |
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-----Original Message----- 宿題で「Born-Haber cycle(イオンの格子エネルギーを計算 する間接的手段として提案された)」をマデリング定数という 言葉を入れて説明しなさいと出されました。しかし答えにどう かいたらいいか分かりません。 ----- unquote -----
Born-Haber cycleってのは、格子エネルギーを実験的に 求めるためのものです。NaClのイオン結晶を例にとると、
NaCl(結晶) → Na+(g) + Cl-(g), ΔH
の反応過程で吸収するエネルギーが格子エネルギーです。 しかし、上の反応のエネルギー変化を直接実験的に求め ることが出来ないので、エネルギー保存の法則から、回り 道して最後に帳尻を合わせるという方法がBorn-Haber cycleってもんです。
回り道1 NaCl(結晶) → Na(s) + 0.5 Cl2(g), -ΔHf
回り道2 Na(s) → Na(s), ΔHsub
回り道3 Na(g) → Na+(g), I
回り道4 0.5 Cl2(g) → Cl(g), 0.5 D + 0.5 RT
回り道5 Cl(g) → Cl-(g), -A
回り道1~5を全部足すともとの式になるので、実験的に求 められるエネルギーを全部足し合わせればいいんです。
ΔH = -ΔHf + ΔHsub + 0.5 (D + RT) + I - A
ΔHf : NaClの標準生成熱 ΔHsub : Naの昇華熱 D : Cl2の解離エネルギー(エンタルピーにするためにRTを 加える) I : Naのイオン化ポテンシャル A : Clの電子親和力(電子親和力は通常正の値として与え られるが、回り道5ではエネルギーが放出されるので 負の値になるため、-Aとする)
とうことで、実験値はこれで求めることが出来るんですね。 いろいろ工夫すれば、あっちに道草、こっちで遊んでも、 最後にちゃんと家に帰ってくれば問題はないんです。途 中で拉致されたりなんてことはないんですね。
これに対してMadelung定数は、結晶の化学組成と結晶 の型で決まる定数で、イオン結晶ではイオンは単純な球 であることが多いこと、格子エネルギーは結晶内のイオ ン間の静電エネルギーと原子間反発力の和で表現でき ることから、静電エネルギーの式をたて、イオン間の距 離やイオンの価数なんかをうまく工夫して静電エネル ギーの式を変形して規格化し、そういう影響が入らずに 結晶の化学組成と結晶の型で決まるように工夫したもの で、無次元数です。式自体は結構複雑で、メール中で表 現するのが大変なので、物理化学の教科書を見てくださ い。要するに、格子エネルギーを理論的にイオン間の静 電エネルギーと原子間反発力の和で表現しようとしたも のです。結晶の型や結晶の単位胞はX線回折により実 験的に求めることができますし、価数も既知ですから、 理論的に計算ができるんですね。
で、Born-Haber cycleで求めた測定値と理論的に求め た計算値が、アルカリハライドのような単純なイオン性 結晶では良く一致するんです。これは、アルカリハライド がほぼ完全にイオン間の静電エネルギーで表現できる ことの証明なんです。この事実は、逆にBorn-Haber cycleで求めた測定値からMadelung定数を逆算し、理論 的に求めたMadelung定数と比較することで、イオン結晶 性がどれだけ完全かを評価することが出来るようになり ます。結晶って共有結合性や分子結合性のものもあり、 それらが混ざっているものが多いですから。
ちなみに、多原子イオンなんかでは、イオンが単純な球 では無いので、上記のような静電エネルギーの求め方 はできなくなるので、注意が必要です。
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