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仁科辰夫教授 最終講義 2023.3.17 米沢キャンパス中示A

【ナレッジ】 マデリング定数とBorn-Haber cycleについて教えてください

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題目マデリング定数とBorn-Haber cycleについて教えてください
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説明
-----Original Message-----
宿題で「Born-Haber cycle(イオンの格子エネルギーを計算
する間接的手段として提案された)」をマデリング定数という
言葉を入れて説明しなさいと出されました。しかし答えにどう
かいたらいいか分かりません。
----- unquote -----

Born-Haber cycleってのは、格子エネルギーを実験的に
求めるためのものです。NaClのイオン結晶を例にとると、

NaCl(結晶) → Na+(g) + Cl-(g), ΔH

の反応過程で吸収するエネルギーが格子エネルギーです。
しかし、上の反応のエネルギー変化を直接実験的に求め
ることが出来ないので、エネルギー保存の法則から、回り
道して最後に帳尻を合わせるという方法がBorn-Haber
cycleってもんです。

回り道1
NaCl(結晶) → Na(s) + 0.5 Cl2(g), -ΔHf

回り道2
Na(s) → Na(s), ΔHsub

回り道3
Na(g) → Na+(g), I

回り道4
0.5 Cl2(g) → Cl(g), 0.5 D + 0.5 RT

回り道5
Cl(g) → Cl-(g), -A

回り道1~5を全部足すともとの式になるので、実験的に求
められるエネルギーを全部足し合わせればいいんです。

ΔH = -ΔHf + ΔHsub + 0.5 (D + RT) + I - A

ΔHf : NaClの標準生成熱
ΔHsub : Naの昇華熱
D : Cl2の解離エネルギー(エンタルピーにするためにRTを
   加える)
I : Naのイオン化ポテンシャル
A : Clの電子親和力(電子親和力は通常正の値として与え
   られるが、回り道5ではエネルギーが放出されるので
   負の値になるため、-Aとする)

とうことで、実験値はこれで求めることが出来るんですね。
いろいろ工夫すれば、あっちに道草、こっちで遊んでも、
最後にちゃんと家に帰ってくれば問題はないんです。途
中で拉致されたりなんてことはないんですね。

これに対してMadelung定数は、結晶の化学組成と結晶
の型で決まる定数で、イオン結晶ではイオンは単純な球
であることが多いこと、格子エネルギーは結晶内のイオ
ン間の静電エネルギーと原子間反発力の和で表現でき
ることから、静電エネルギーの式をたて、イオン間の距
離やイオンの価数なんかをうまく工夫して静電エネル
ギーの式を変形して規格化し、そういう影響が入らずに
結晶の化学組成と結晶の型で決まるように工夫したもの
で、無次元数です。式自体は結構複雑で、メール中で表
現するのが大変なので、物理化学の教科書を見てくださ
い。要するに、格子エネルギーを理論的にイオン間の静
電エネルギーと原子間反発力の和で表現しようとしたも
のです。結晶の型や結晶の単位胞はX線回折により実
験的に求めることができますし、価数も既知ですから、
理論的に計算ができるんですね。

で、Born-Haber cycleで求めた測定値と理論的に求め
た計算値が、アルカリハライドのような単純なイオン性
結晶では良く一致するんです。これは、アルカリハライド
がほぼ完全にイオン間の静電エネルギーで表現できる
ことの証明なんです。この事実は、逆にBorn-Haber
cycleで求めた測定値からMadelung定数を逆算し、理論
的に求めたMadelung定数と比較することで、イオン結晶
性がどれだけ完全かを評価することが出来るようになり
ます。結晶って共有結合性や分子結合性のものもあり、
それらが混ざっているものが多いですから。

ちなみに、多原子イオンなんかでは、イオンが単純な球
では無いので、上記のような静電エネルギーの求め方
はできなくなるので、注意が必要です。