平衡電位からのずれ。電極反応がモタモタしてなかなか進まない程度。モタついているワケとしては電子移動が律速になっている場合ターフェルプロット1)と物質輸送が律速になっている場合があります。それぞれを活性化過電圧(反応過電圧)、拡散過電圧、抵抗過電圧などと呼びます。全体の過電圧はキルヒホフの法則により個々の過電圧の代数和となります。
活性化過電圧の中では水素過電圧、酸素過電圧、塩素過電圧などが工業電解などの応用面で重要。工業電解では電力効率を高めるために触媒作用のある物質を電極に使ったりして過電圧を小さくします。
電位窓を広くとるには分解の過電圧が大きい方が良い。また水溶液を使った電池で水の分解電圧(1.23V)より大きな起電力を得られるのは、正極活物質と負極活物質に酸素過電圧と水素過電圧の大きい物質を使っているからです分解電圧 ~速度論的取り扱い2)。
電池の消耗は内部抵抗が大きくなって過電圧が増加することですから、負荷をつながずに電圧だけを測ってもあまりわかりません。
過電圧が0のところでは酸化反応と還元反応の電流密度 J 〔A/m²〕が等しいと考えられます。この平衡状態にあるときの電流密度を交換電流密度と呼びます。
電池3)の放電時の過電圧は、短絡状態で起電力と等しくなり、外部に駆動力を持たない場合の最大となります。
【関連講義】
エネルギー変換化学特論,第3講 水の安定領域と過電圧電池の内部抵抗と過電圧(2011_H23)4)
エネルギー変換化学特論,電池の内部抵抗と過電圧電池の内部抵抗と過電圧(2011_H23)5)
エネルギー変換化学特論,電池の起電力と分解電圧電池の起電力と分解電圧(2011_H23)6)
無機・分析化学応用実験,分解電圧 ~速度論的取り扱い7)
【関連書籍】電池とエネルギー
化学エネルギーの変換装置としての電池
電池の表記(電池式)
過電圧
出典:
電池とエネルギー
(山下正通、小沢昭弥. 現代の電気化学. 丸善, . ) 8)