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7.固体の電気的性質 7-1 電気的性質による固体の分類 ☆電気が流れるということ → 固体の中を「電荷を持った粒子が移動すること」。 電荷を持った粒子:電子およびイオン。ここではまず電子による電気伝導について。 <電気抵抗、比抵抗、導電率>
・電気抵抗:ある物体(固体)に電圧E(V)をかけた ところ、電流I(A)が流れた。 電気抵抗R(Ω)は R = E/Iで与えられる。→「オームの法則」 物体のサイズや形がかわると、電気抵抗も変わる。断面積が広いほど、長さが短いほど、電気 抵抗は小さくなる。 ・比抵抗(または抵抗率):断面積M、長さdの物体の電気抵抗がRのとき、比抵抗(ρ)は ρ = R×M/dで与えられる。単位はΩ・cm、Ω・m、S-1・cm、S-1mなど。 これは、試料のサイズや形に依存しない、物質本来の電気の通しにくさを表わす。 ・導電率(または電気伝導度):比抵抗の逆数。σで表わす。物質本来の電気の通しやすさを表わす。 単位はS・cm-1、S・m-1など。
例:断面積1mm2、長さ1mの物質に10Vの電圧をかけたところ、1mAの電流が流れた。この物質の電 気抵抗、比抵抗、導電率を計算せよ。
① 良導体(金属的導体、金属ともいう) → 室温における導電率がおおむね106S・m-1以上。温度が上がると導電率がかすかに低下する。 ② 半導体 → 室温における導電率がおおむね10-6S・m-1以上106S・m以下。温度が上がると導電率が大きく上が る。良導体と半導体の区別がつきにくいときは、導電率の温度変化を調べればわかる。 ③絶縁体 → 室温における導電率がおおむね10-6S・m-1以下。完全な絶縁体(導電率=0)は存在しない。 今週のまとめ: 1.エネルギーバンドについて理解する。 2.電気抵抗、比抵抗、導電率について理解する。 3.良導体、半導体、絶縁体の違いを理解する。
7-2 絶縁体、半導体、良導体のエネルギーバンド ・絶縁体:ダイヤモンド(C)、ポリマー(Cを主成分とした有機物)、ガラス(SiO2が主成分)… → 比較的軽い元素同士の結合。結合が強い→結合性軌道と反結合性軌道との差が大きい。 ・半導体:ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)など中程度の重さの元素 → 絶縁体よりも化学結合力が弱い→結合性軌道と反結合性軌道との差が比較的小さい。 ・良導体:主として金属。金属結合は、「価電子の数よりも結合相手の数が多い」。 → 金属結合は化学結合力が小さい。また、結合の相手の数が多いと、バンド幅が広がる。
絶縁体 半導体 良導体(伝導体と価電子帯が一部重なる)
エネルギーバンドに基づく、電気伝導のイメージ
*良導体は「水(電子)が半分満ちた容器」のようなエネルギーバンドを持っている。 少し傾ける(電圧をかける)と、水(電子)は低い方にどんどん移動する。→電気が流れる。
*絶縁体と半導体は、水(電子)が満杯の容器と空っぽの容器がふたつあるようなもの。 いくら傾けても、中の水(電子)は移動しない。→電気は流れない。(半導体は、温度が低いとき はほとんど電気を通さず、絶縁体と同じである)。
7-3 真性半導体の電気伝導 左図の半導体のエネルギーバンドは、実は外からエネルギーが与えられて いない状態。半導体の禁止帯の大きさは、0~約3.0eV程度である。 Siの場合、1.1eVで、これは波長1128nmの光(赤外線)に相当。 したがって、Siは可視光を吸収してしまう(これに対して絶縁体は 可視光を吸収せず、基本的には透明)。
半導体に光が当たる、あるいは熱エネルギーが供給されると…
価電子帯から伝導帯に電子が「励起」される。光の量が多いほど、また 温度が高くなるほど、励起される電子の量は増える。 すると、電圧をかけたときには、励起された電子と、「電子の抜けた孔」 が、それぞれ水滴と気泡のように移動できるようになる。 → 少しだが、電気を通すようになる!
負極 正極 電子が抜けた孔は負極に向かって動く(代わりにとなりの 電子が反対側に動いている)。これも電気を運んでいる。 伝導帯の電子ももちろん電気を運んでいる。
伝導帯の電子は「伝導電子」、価電子帯にできた電子の抜け穴は「正孔(ホール)」 と呼ばれる。どちらも電気を運ぶので、総称して「電荷担体(キャリア)」と呼ぶ。
伝導電子と正孔の濃度がつねに等しい半導体を「真性(あるいは内因性)半導体」 と呼ぶ。 電荷担体の濃度(n)が温度上昇によって増える度合いは、   という関係式で表わされる(Aは定数、Egは禁止帯の幅。厳密にはフェルミ・ディラク分布、近似的にはボルツマン分布)。 導電率(σ)は、σ = neμ (μは移動度、電荷担体の動きやすさ。eは電荷)で表わされるから、温度が高 くなるにつれ、半導体の導電率は急激に高くなる。 例題:縦軸に導電率の対数、横軸に温度の逆数をとったグラフを作ると、導電率はどのような線になるか。
7-4 外因性半導体 ☆我々の使っている半導体製品(Siが主体)は、多少温度が変化してもちゃんと働く。真性半導体のSiは、 室温付近では導電率が低すぎる。そのため、導電率を自由に変えるための工夫がなされている。
7-4-1 固体Siの中のSiのごく一部を15族元素(Pなど)ですりかえる        PはSiよりも電子を1個余分に持っている。Si(白丸)結晶の中に P(横線の丸)が混じりこめば、結合に関与しない電子(斜線の小さな 丸)が1個できてしまう(女性4人と男性5人がコンパしたら、 孤独な男性が一人できる)。結合にあずからない電子は、少しのエネル ギーをもらっただけで、結晶中を動き回れる(いじけてどこかにいく)。 このような物質のエネルギーバンドは右下のようになり、禁止帯の中の 伝導帯に近いところに、余分な電子のための「準位」ができる(この電子 は結合にあずかれないため、他の4個よりも高いエネルギー状態にある。 その分、伝導帯に近いところにいる)。 余分な電子は、少しのエネルギーで伝導帯に飛び移り、結晶中を移動。
このような物質では、主として「伝導電子」が電気を運ぶ。伝導電子の電荷は負(negative)なので、 これを「n型半導体」という。Pによってもたらされる電子の準位を「ドナー準位」という。 少量のPを混ぜるだけで、Siの電気的性質が大きく変化する。そのような目的で加えられる元素(こ こではP)をドーパントといい、その操作をドーピング(ドープする)という。
7-4-2 固体Siの中のSiのごく一部を13族元素(Alなど)ですりかえる AlはSiよりも電子が1個少ない。すると、結合を4個完成することが できない場所(×)が生じる。ただし、ここには外から電子が入って 来ることはできる(少し居心地は良くないが)。(女性4人、男性3人 でコンパをすると、空席ができて、隣のテーブルから見知らぬ男が 入る余地ができる)。 このような物質のエネルギーバンドは右下のようになり、電子が 入れる空席が価電子帯に近いところにできる(「アクセプター準位」 という)。アクセプター準位には、価電子帯の電子が少しのエネルギー で入りこめるようになり、正孔ができる(隣の男が入りこめば、その 人間がいた席は空席になる)。
このような物質では主として正孔(電荷が正(positive))が電子を運ぶ のでp型半導体という。この場合のAlも、ドーパントである。
ドーパントの濃度が高くなれば、それだけ電荷担体も増えやすくなる。ドーパント濃度で導電率を任意に変えられる。ドープした半導体を、「外因性半導体」と呼ぶ。
7-5 金属結合と良導体の電気伝導
☆ 金属結合の特徴は、「価電子数より結合の相手の数が多い」こと。そのような状況ができる理由 を理解すること。 例題:金属Naは体心立方構造をとっている。Naの価電子は何個か?結合の相手の数はいくつか?
価電子帯・伝導帯のバンド幅:結合の相手の数が多いほど広くなる。 禁止帯の幅:結合が弱いほど狭くなる。 → 結果として、良導体(金属)では、価電子帯と伝導帯が一部重なる。 → 金属結合に預かっている電子は、結合性軌道に属して結合を作ろうとする反面、反結合性軌道の 電子の性格(結合を切ろうとする)もいくぶん持っている。
・ 金属Naの中の価電子の様子の模式図(右図)。今注目している Na原子(中央)は、現在下の原子と結合をしている。しかし、 次の瞬間、その価電子は結合を切って別のNa原子の電子と 対を作る。そうかと思えば、次の瞬間にはまた…。 このように、一旦作った結合を切ることができるのは、電子が 反結合性軌道の性格をいくぶん帯びているからである。結局、中央のNa原子は、8個の結合相 手と1/8の時間ずつ結合を作っていることになる(本命の恋人以外に付き合っている人がn人い ると、本命の相手とは1/(n+1)の時間しか共有できなくなる)。
・ 金属に特有な性質に、延性・展性(破壊することなしに伸ばしたり薄くしたりできること)があ る。金属中の原子ははいつも特定の相手とだけ結合しているわけではなく、常に結合を切って誰 でも良いから他の相手と新たな結合を作ることができるから、そのような性質が現われる。
・ 良導体の導電率は、温度が高くなるとわずかに低下する(低下の度合いは、半導体における導電 率の上昇の度合いよりもはるかに小さい)。その原因は、σ = neμの式の中のμ(移動度)が温 度上昇に伴ってわずかに低下することにある。その理由を模式図で示そうとすると正確さを欠く ことになるが、定性的には高温で原子の熱振動が激しくなると電子の受け渡しがスムーズに行え なくなると理解して良い。バケツリレーをするときに、隣の相手との間隔が狭くなったり広がったりすると、バケツをスムーズに渡しにくくなるように。この授業の中では、半導体の導電率の温度変化を理解することが重要であり、良導体の導電率の温度変化はあまり重要ではない。
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