研究テーマ |
植物は,地球上のどの場所でも,成長や生存を制限する各種のストレスに曝されている.地球環境問題の悪化で,大気汚染,砂漠化,紫外線の増加などに耐えられる植物が求められている.よって環境の変化と植物のストレスとの関係の解明が必須である.
これまでは本研究室では、インビボ(in vivo) ESRスピンプローブ法を用いカイワレ大根を指標植物として研究を行ってきた。しかし,指標植物として用いられている背景がデータとして出されていない.
本研究では,更なる指標植物の可能性を求めることを目的とし,種々の植物の測定を行い,スピンプローブ剤の還元及びNO2曝露に対する応答を観測した. SEN, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
植物はその生育環境の中で様々なストレスを受けている.植物のストレス耐性を測る試みの中で,電子スピン共鳴(ESR)法による研究が始められ,傷,光,温度,気体曝露などを始めとするストレスに対する応答計測が行われている.
本研究では,スピンプローブESR法を用いて,インビボで植物のストレス応答を評価すること,および本法に関わる現象の機構解明を目標とした.具体的には,L-バンドESR装置を用いて,大気汚染物質を意図した気体(二酸化窒素,オゾン)を使用し,これらに曝露された植物の酸化還元状態の測定を行い,植物成分への阻害物質⇒#1241@出版物;の影響を調べることによって,ストレス応答機構についての情報を得た.同一固体中の葉間の情報伝達を探るため、ESR画像法を用いる計測も行った。
せかい, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
植物のストレス応答機構を解明するためには,植物が生きたままで,かつ,植物が生息している環境の中での測定を行う必要がある.これまで,植物葉のストレス応答測定に,表面コイル型共振器を持つ携帯可能な低周波ESR装置(@700MHz)が使用されている.しかし,その装置では対向型の2つの磁石が使用されているために,試料の大きさには静磁場発生用磁石の磁極間隔で決まる制限があった.そこで,より大きな葉試料に対応するために,永久磁石1個と表面コイル型共振器を一体化したESRプローブが提案された.これは聴診器のように使用できるため,より大きな葉の計測が可能である.また,より軽量小型化が可能であるためにフィールドワークに適している.しかし,装置の安定性や感度に問題があった.本研究では,このESRプローブについて,磁場の均一性を高めるための磁気回路を試作し,屋外でのインビボ(in vivo)計測への有効性を検討する. Seed, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
日常生活においてガラスは必要不可欠な素材であるが、ガラスを製造している段階で着色の為に添加される金属イオンなどが酸化力を持ってしまい、ガラス表面に接触する物質を酸化させ劣化させてしまうという事例が報告されている。したがって本実験ではスピンプローブ剤であるHITO⇒#1572@材料;を用いX-バンドESR装置でガラス表面の酸化力を測定した。 えーす, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
魚類で確立された唯一のストレス評価法は,血中コルチゾル濃度を測定する方法である.ストレスは成魚だけでなく血液採取が不可能な発生過程である卵や胚,稚仔魚でも負荷されるが,これらのステージでのストレス応答を検出する方法は皆無であり,評価することは困難である.そこで,本研究では,従来のストレス評価方法が応用できない発生ステージでの,新たなストレス評価技術の開発を目的とし,スピンプローブESR法⇒#24@グラフ;およびESR画像法を用いて,インビボ(in vivo)でサケ科魚卵の発生過程における生体内酸化還元状態を知るとともに,サケ科魚卵胚におけるストレス応答の評価技術の開発,ストレス負荷が軽減される養殖魚育種の確立とストレス耐性系統作出への応用を図ることを目的とする.
よっしー, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
TEMPOL繰り返し投与法によるラットの抗酸化能評価
L-バンドESR装置によるTEMPOL水溶液のESRスペクトル⇒#24@グラフ; じゅんじ, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2006). |
活性酸素による酸化ストレスと疾病の関係が明らかになるにつれ,抗酸化食品に注目が集まっている.これまで,種々の抗酸化能評価法が提案されているが,活性酸素種それぞれに対する抗酸化能評価法は確立されていない.本研究では,スピントラップ電子スピン共鳴(ESR)法を用いて,スーパーオキシド⇒#282@化学;および過酸化ラジカルに対する消去能評価法を確立することを目的とする.評価法の原理を図1に示す.これは競争反応を導入したスピントラップESR法であり,単独発生系からの活性酸素種に対するスピントラップ剤(DMPO⇒#2168@材料;)および抗酸化物質(試料)の反応を競争的に引き起こし,得られるDMPO-活性酸素アダクト⇒#2048@化学;⇒#467@反応;⇒#28@グラフ;のESR信号強度の比較から消去能を評価する方法である.
【後輩】中~資は、2013年に、それまでの研究を過酸化ラジカル発生系の検討と抗酸化能評価法への応用というテーマで卒業論文としてまとめ、山形大学を卒業した⇒#519@卒論;。 範馬勇次郎, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
ルチル, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
In vivo ESR/スピンプローブ法による酸化還元状能計測― ラットへのオゾンの影響 ―
オゾンの存在は200年以上も前から知られていた。これまでその有害性、効果について不透明な部分が多かったが、近年オゾン治療による病気の治癒効果(特に欧米では糖尿病などが原因で生じる末梢血液循環不良による壊死が回避される等)がある症例も増え、確実に応用範囲が広げられてきている。しかし、有毒性もありながら生体の酸化還元状態に及ぼすオゾンの影響については十分な検討がなされていない。そこで、本研究は、インビボ(In vivo)ESR/スピンプローブ法を用いオゾン等ガス曝露したラットの還元能に及ぼす影響を検討した。 あとで, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
養殖水産業では,閉鎖・半閉鎖型高密度養殖により魚に負荷されるストレスが大きな問題となり,ストレス耐性のある魚の育種が強く望まれている.本研究は、様々なスピンプローブ剤の合成を行い,電子スピン共鳴(ESR)法を用いてレドックス変動を比較検討することで,受精卵の胚盤・胚体における防御機能についての情報を得ることを目的とする. かえる, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
In vivo ESR/スピンプローブ法による酸化還元状態計測-ラットに及ぼすアロマセラピーの影響-
ストレスの多い現代社会の中で「リラクゼーション」や「癒し」が求められている.アロマセラピーは香りの力を応用した芳香療法で効果は気分転換やリラックスだけに収まらずに、現代病にも効き、心と体の両方に作用するため、心療内科やホスピスでも利用され始めた.しかし、嗅覚の研究は視覚や聴覚に比べて遅れているという.音色や音量、光りの強弱や色調といったものは機械で調節できるが、においはそうはいかずにコントロールするのが難しいためである.そこで本研究は、In vivo ESR/スピンプローブ法(インビボ スピンプローブESR法)を用い、アロマセラピーがラットに及ぼす影響を検討した. ねずみ, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
近年の地球環境問題や魚類養殖における高密度飼育は魚類の生息環境悪化をもたらしている.生息環境の悪化は物理的・化学的ストレスとなり,やがては成長障害や魚病発生をもたらす.それらの問題を解決するためにはストレス耐性系統の作出およびストレス耐性評価技術の確立が不可欠である.現在,成魚においては血中コルチゾル濃度の変化を計測することでストレスを評価する手法が確立しているが,その手法には施設やコストの面で問題がある.そこで,本研究ではストレスホルモンの一種であるコルチゾルが産生される際に活性酸素が発生し,酸化還元状態に変化がみられるという点に注目して,血液の酸化還元状態計測によるストレス評価技術の検討をすることを目的とする. やまめ, 山形大学 卒業論文(尾形・仁科研), (2005). |
イネ,コムギ,トウモロコシなどの穀類は人間や家畜の主要なエネルギー源となっており,人類にとって最も重要な植物である.一方で世界人口は増加の一途をたどっており,2050年には世界人口は89億人に達すると予測されている.人口増加に伴い懸念される食糧不足に対応するために,主要穀類の収量(生産力)増加につながる研究成果が求められている.イネはこれら穀類中でゲノムサイズが最も小さく,形質転換技術も普及しているとともに,全ゲノム配列が解読されていることなどから,主要穀類であると同時に単子葉のモデル植物として位置づけられている.イネでの研究成果はゲノム構造上の類似性(ゲノムシンテニー)を有する他の穀類(トウモロコシ,コムギなど)にも応用できる可能性を秘めている.これら穀物の育種効率の向上のためには,植物のストレス応答特性を把握しストレス耐性能力を検定する評価方法が求められている.本研究では,スピンプローブESR法によってストレス応答の機構解明を試みると同時に,種々のストレスを与えたときの応答特性を追跡した. ルチル, 山形大学 卒業論文(), (2007). |
うこぎに含まれている主な有用成分としてポリフェノールがある。ポリフェノールはほとんどの植物に含有され、その数は3000 種以上に及ぶ。光合成によってできた植物の色素で苦味の成分であり、植物細胞の生成、活性化などを助ける働きをもっている。そのポリフェノールは人間に対し動脈硬化・老人性痴呆症・脳梗塞・リウマチ性疾患・心筋梗塞・痛風・糖尿病・ガンなどの病気の原因となる活性酸素の働きを抑える抗酸化作用がある。これはポリフェノールのベンゼン環上にあるフェノール性水酸基が酸化還元電位が低く、容易に自身が酸化されることにある。その中でもうこぎ葉中には主にルチン⇒#2320@材料;、クロロゲン酸⇒#1315@材料;というポリフェノールが含まれていることがわかっている。
本研究ではうこぎ葉の抽出方法や抽出時間を変化させ、ルチン,クロロゲン酸含有量の変化を追った。これにより、うこぎ飲料製造時に葉からの抽出工程の成分抽出最適値を検討する。
アスコルビン酸(ビタミンC)⇒#2181@材料;は、フォーリン-チオカルト法の影響を受けるが、アスコルビン酸オキシダーゼ(ASOD)⇒#1785@材料;によって、 さやえんどう, 山形大学 修士論文(), (2007). |
私たちの健康を考える上で活性酸素が注目されている.活性酸素とはスーパーオキシド(O2-),2電子還元である過酸化水素⇒#313@材料;(H2O2),電子励起状態の酸素分子である一重項酸素(1O2),ヒドロキシルラジカル(・OH)⇒#1619@化学;等をいう.活性酸素は本来,動物の体内に存在し,白血球の殺菌作用や免疫機構の中で働き,体を守る上で必要である.しかし,過労やストレスなどで過剰につくられると細胞膜破壊,遺伝子の損傷を起こし様々な悪影響を及ぼす.
活性酸素の検出及び定量法として電子スピン共鳴法(ESR法)が使われている.しかし,活性酸素である過酸化水素についてはESRによる分析法がほとんど検討されていない.本研究では,diethylenetriamine-N,N,N’,N”,N”-pentaacetic acid-Fe(Ⅱ)(DTPA⇒#2169@材料;-Fe(II))錯体と過酸化水素の反応(フェントン反応⇒#472@反応;)により生成したヒドロキシルラジカルをスピントラップ法でトラップする方法⇒#468@反応;⇒#27@グラフ;やラジカル化試薬であるHTIO⇒#1572@材料 HN, 山形大学 卒業論文(), (2006). |
現在炭素材料には様々な種類があり、その使用目的も様々である。炭素材料は不対電子(フリーラジカル)を持っており、ESR(電子スピン共鳴)法による分析が可能であるが、炭素材料の機能評価に用いられる資料として、このフリーラジカルに注目した研究は十分ではない。本研究では種々の炭素材料のフリーラジカルについてのデータベースの作成を目的としており、今回はマイクロ波出力の上昇によるエネルギー飽和についての実験を行った。炭素材料⇒#25@グラフ; HN, 山形大学 卒業論文(), (2006). |
卒論… |