学生実験

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0. はじめに

学生実験室:3-408(3531)
学生実験室の様子

器具と試薬


1. 電流・電位・電気量の測定とファラデーの電気分解の法則

ゼムクリップを洗浄・乾燥し、めっき前のゼムクリップの質量を精密化学天秤で0.1 mgの桁まで読み取る。0.5 mol・dm-3 CuSO4電解液中で、ゼムクリップに通電し、きっかり3.0 mg銅めっきする。めっき後のゼムクリップを洗浄・乾燥し、めっき後のゼムクリップの質量を精密化学天秤で0.1 mgの桁まで読み取る。めっき後とめっき前の質量差からめっきした銅の質量を求める。

銅(ゼムクリップ) 硫酸銅水溶液| 銅(ゼムクリップ)


2. 電池の起電力と分解電圧

2.1 銀|塩化銀電極(基準電極)の作成とエレクトロメータの較正(こうせい)

【結果】2本の銀|塩化銀電極の電位差[V]、ダニエル電池の起電力の理論値[V]、Cuの単極電位[V vs.Ag|AgCl]、Znの単極電位[Vvs.Ag|AgCl]、電位数直線(横軸電位[V])と単極電位の差[V] 電気化学セルを組み立てて銀線を塩酸中でアノード酸化して1本だけ作ります。その作り方は次の通りです。銀線を紙やすりで研磨し、清浄な金属面を露出させます。その金属面を3M HNO3で前処理し、水洗いします。その電極で以下のセルを作成し、0.8mA/cm2で15分ほど電解し、表面に塩化銀を析出させます。電解セルには10mLビーカーを使います。転倒防止のため電解液を注ぐ前に底に両面テープを貼っておき、電解液を注ぎ終わったビーカーは実験台にしっかり固定します。電極はダブルクリップで固定します。 同じ手順でもう1本作成する。2本の電極を飽和KCl溶液に浸漬し下記のような電池を作成し、電位差をデジタルテスターで確認する。電位差が5mV以内であることを確かめる。もし、2本の電極電位が5mV以上ある場合は、うまく出来ていないと思われる方を作成しなおし、電位差が5mV以内になるまで繰り返す。10mLビーカーを2個用いて塩橋で接続する。塩橋にはシリコンゴム管を用いる。煮溶かした電解質-寒天溶液を専用スポイトで吸い上げて固め、ゴム管の両端をカットする。

Ag |0.1 mol·dm-3HCl| Pt

→参考書:電気化学測定法(上)技報堂出版、p97「銀|塩化銀電極の作り方」
→参考書:電気化学測定法(上) 技報堂出版、p96「新しく作った電極の電位チェック」
→参考書:電気化学測定法(上) 技報堂出版、p94「塩橋の作り方」


2.1 電極電位の濃度依存性

【結果】Fe3+,Fe2+系の電位[V vs. Ag/AgCl]と濃度比の片対数プロット ネルンストの式を使って*5)、鉄イオンの濃度を変えたときの酸化還元電位を計算する。0.1M硫酸に硫酸鉄アンモニウム(Ⅱ)と硫酸鉄アンモニウム(Ⅲ)を溶解して、0.025M鉄イオン(Ⅱ)と0.025M鉄イオン(Ⅲ)の溶液を調整し、これらの溶液を混合して種々の濃度比の電解液を調整する。次に銀/塩化銀電極と電気化学セルを組み、補償法およびエレクトロメータによって起電力を測定する。鉄イオン(Ⅱ)と鉄イオン(Ⅲ)の濃度比は、濃度比1を中心に片対数方眼紙上で等間隔になるように少なくとも5点以上測定する。片対数方眼紙へのプロットは測定と同時に行うこと。プロットから最小二乗法によって求めた傾きが、RT/nFになることを確認する。

Pt |Fe3+,Fe2+,0.1M H2SO4 ||KCl|AgCl|Ag

    溶液の調整(左図) ポテンシャルメータ(中央図) ネルンストのプロット(右図)

?設問:ネルンストの式によれば電位は濃度依存性があるが、それはどうしてか?
?設問:0.025M鉄イオン(Ⅱ)のみ(鉄イオン(Ⅲ)=0)の場合、あるいはその逆の場合は、ネルンストの式による電位はどうなるか?
?設問:鉄イオン(Ⅱ)と鉄イオン(Ⅲ)の組み合わせとしてフェリシアン化カリウム/フェロシアン化カリウムの系について行った場合はどうか?

2.2 分解電圧

参考書より、理論分解電圧を求める。アノードとカソードに白金を用いて0.1 mol・dm-3 H2SO4, 0.1 mol・dm-3 NaOH、0.1 mol・dm-3 HClの電流電位曲線を測定し、分解電圧を求める。方眼紙へのプロットは測定と同時に行うこと。理論分解電圧と実測値から過電圧を求める。電流の測定にはカレントフォロアを、電圧の測定にはエレクトロメータを用いることを推奨する。

Pt | H2SO4 | Pt
Pt | NaOH | Pt
Pt | HCl | Pt

参考書より、理論分解電圧を求める。アノードに白金、カソードに銅、亜鉛、黒鉛を用い、0.1M H2SO4の電流電位曲線を測定し、分解電圧を求める。理論分解電圧と実測値から過電圧1)を求める。白金以外の金属は測定直前に研磨後、0.1M HClで前処理を行い、水で十分に洗浄する。電流の測定にはカレントフォロアを、電圧の測定にはエレクトロメータを用いることを推奨する。同様にカソードに白金、アノードに鉄、ニッケル、黒鉛を用いた場合について、0.1M NaOHの分解電圧を測定し、過電圧を求める。

【結果】電解液の種類による過電圧の違いを示す電圧-電流プロット、アノードの種類による過電圧の違いを示す電圧-電流プロット、カソードの種類による過電圧の違いを示す電圧-電流プロット

カソード側
Pt | H2SO4 |Cu
Pt | H2SO4 |Zn
Pt | H2SO4 |C

アノード側
Fe | NaOH | Pt

Ni | NaOH | Pt

C | NaOH | Pt




電流と電圧のプロット


3. 工業への応用

3.1 アルマイト

【製品】美しく着色されたアルミニウム 試料極にアルミニウムワイヤを用いる。 アルミニウムは測定直前に研磨後、0.1M NaOHでアルカリ前処理を行い、水で十分に洗浄する。 電解液に0.1M H2SO4を用い、対極にアルミニウムワイヤを用いて一定電流10mA/cm2を通電し、 電位時間曲線(クロノポテンショグラム)を測定する。 電流値を監視し、常に一定になるように抵抗尺を操作する。 カレントフォロアと電流分割器を使うか、 後述設問のガルバノスタットを使うことを推奨する。 そのときの電位をエレクトロメータで読み取る。 アノード酸化が終ったら、加温したコンゴーレッド(50mg/10mL)、アニリンブルー溶液(50mg/10mL)に浸漬し、 酸化していないアルミニウムワイヤと着色状態を比較する。 またAl-PETフィルムを紙やすりで磨き清浄な面を露出させ、同様に染色加工し、メタリックピンクおよびメタリックブルーのフィルムを作成する。

Al | H2SO4 | Al

アルマイトのセル

?設問:電流値を一定にする操作を自動的に行うにはどのような回路を使えば良いか?
?設問:硫酸の替わりにアジピン酸アンモニウムやホウ酸を用いた場合にはどんな工業製品に応用できるか?

3.2 マンガン電池

アルマイトのセル

3.3 エッチング

3.3 ディスプレイ


実験場所

薬品

Webclass


WebClass

WebClassは、山形大学で導入しているe-learningシステムです。 工学部学術情報基盤センター で発行される学生IDで利用することができます。



http://c1.yz.yamagata-u.ac.jp/Education/Experimental.htm hr/>

教科書と参考書

テキスト: テキスト:野村正勝・鈴鹿輝男, 最新工業化学―持続的社会に向けて―, 講談社サイエンティフィク (2004).
テキスト:小沢昭弥、現代の電気化学,丸善(2012).※電子書籍、生協にて取り扱い
テキスト:小林一也,工業技術基礎、実教出版 (2002).
参考書:中村英二、吉沢康和, 新訂物理図解, 第一学習社, (1984).
参考書:数研出版編集部, 視覚でとらえるフォトサイエンス物理図録, 数研出版 (2006).
参考書:実教出版,サイエンスビュー化学総合資料(新課程),実教出版,(2013).
参考書:木村優、中島理一郎, 分析化学の基礎, 裳華房 (1996).
参考書:P. W. Atkins [著]/千原秀昭, 稲葉章訳, アトキンス物理化学要論第5版, 東京化学同人 (1998).
参考書:鵜沼英郎・尾形健明, 無機化学, 化学同人 (2007).
参考書:A. J. Bard, L.R. Faulkner, “Electrochemical Methods”, 2nd Ed., John Wiley & Sons. (2001)

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