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フッ素1)、塩素2)、臭素3)、ヨウ素4)、アスタチンです。原子番号が若いほど酸化力が大きくなります。金属とハロゲン化物を作ります5)。
単体は二原子分子からなりますが、反応性が大きいため自然界に単体は存在しません。常温常圧ではフッ素と塩素が気体であり、臭素が液体、ヨウ素とアスタチンは固体です。みな色がついています。つまり光によって励起されるということです。ハロゲンと水素の化合物をハロゲン化水素といいます。またハロゲン化銀は写真フィルムの乳剤に使われています。
【関連書籍】
無機物質6)
無機物質7)
無機化合物8)
無機物質9)
( 1)  フッ素,  Fluorine,  F, ( 元素). ( 2)  塩素,  Chlorine,  Cl, ( 元素). ( 3)  臭素,  Bromine,  Br, ( 元素). ( 4)  ヨウ素,  Iodine,  I, ( 元素). ( 5)  > 金属ハロゲン化物木田茂夫著, 無機化学, 裳華房, ( 1989). ( 6)  > 無機物質実教出版, サイエンスビュー化学総合資料, 実教出版, ( 2005). ( 7)  > 無機物質竹内敬人ほか, ダイナミックワイド図説化学, 東京書籍, ( 2003). ( 8)  > 無機化合物数研出版編集部, 視覚でとらえるフォトサイエンス化学図録, 数研出版, ( 1998). ( 9)  > 無機物質佐野博敏、花房昭静, 総合図説化学, 第一学習社, ( 1995).
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【元素各論】 1.17族元素(ハロゲン) (無機化学序説、p.53~60) <元素各論共通のポイント> ① 単体の構造と性質、簡単な化合物(水素や酸素との化合物)の構造と性質について、高校の時には単に「暗記」させられていた事項が、定性的に説明可能であることを再認識すること。 ② 周期表のタテの関係、ヨコの関係にはおおまかな共通要素がある。それらをできるだけ多くの観点から把握すること。
1-1 元素の性質、所在と製法 … 各自テキストで自習のこと。
1-2 周期表のタテの関係について(一般論) ⇒ 各族の各論で再度詳説。 … 1, 2族(s-ブロック元素)および13~17族(p-ブロック元素)について共通することがら。 ・1番上の元素は、しばしば2番目以下の元素とは一風変わった性質を示すことがある。 ・例外的な場合を除いて、同種元素間で二重結合や三重結合を作るのはC、 N、 Oだけ。 ・大まかに言って、単体の結合エネルギーは、下に行くほど弱くなる。 (軽い元素ほど強い結合を作ることができる) ・下に行くほど金属的な性質が強くなる(13~16族)。 ・下に行くほど、プラスの酸化数が「小さく」なりやすい(13~16族)。 ・下に行くほど、水素化物の酸の強さは強くなる。 ・下に行くほど、単体の還元力が強くなる(酸化力が弱くなる)。
1-2 単体の性質 ○ 単体の色: HOMOとLUMOについて ○ 融点、沸点の傾向: 一般に、分子量の大きい分子ほど分子間力が強くなり、融点・沸点が高くなる。 ○ 結合エネルギーの傾向とフッ素の異常性: I2 < Br2 < Cl2 … 軽い元素ほど強い結合を作る。 *定性的イメージ: ヨウ素はN殻まで全部電子で詰まっていて「おなかの贅肉」がたっぷりついている。電子密度の低い5p軌道どうしが浅く重なる(深く重なると贅肉どうしの電子反発が強くなる)。 塩素はL殻までしか電子が詰まっておらず「おなかの贅肉」がそれほどない。電子密度の高い3p軌道同士が深く重なることができる。
F2 << Cl2 … フッ素は塩素より軽いのに、結合エネルギーが弱い。 *右図のように、フッ素はサイズが小さいので「孤立電子対(非結合電子対)」 同士の反発が強くなる。
○ 電子親和力とフッ素の異常性: I →Br → Clの順に電子親和力が大きくなる(有効核電荷との関係で理解せよ)。 しかし、FはClより電子親和力が小さい → フッ素はサイズが小さいので、すでにある電子から若干反 発を受ける。 *ただし、Fの電子親和力は小さいがF2の結合エネルギーも低いので、X2 + 2e- → 2X-となる傾向 (単体の酸化力)はフッ素が最大。
○ 水との反応性: F2は水を酸化 F2 + H2O → 2HF + 1/2O2 酸性溶液でのClのラティマー図 ClO4-   → ClO3-   → HClO2 → HOCl → Cl2  →  Cl- 1.19 1.21 1.65         1.63      1.36 <問> Cl2を水に溶かすとどうなるか?(塩基性溶液でも結果は同じ) <問> 塩素系漂白剤と塩酸系洗剤を混ぜると、どのような不都合が生ずるか?
1-2 ハロゲン化水素(HX) ○ 製法については各自自習のこと。 ○ 単体X2とH2との反応性の序列(p.56): 単体とHXの結合エネルギーから理解せよ。 ○ (ブレンステッド)酸の強さ(酸解離定数… 表7.3の酸解離指数は誤植か?): テキストでは「HSAB則をここで紹介するために」、酸の強さをHSABで説明しているが、前々回の講義で はもっとシンプルに説明してある。陰イオンの大きさと酸の強さとの関係を理解せよ。 ○ 沸点の傾向とHFの異常性:水素結合の観点から高校で学習済み。各自復習のこと。 ○ 塩化水素と塩酸の違い:塩化水素は常温で気体のHCl、塩酸は「塩化水素の水溶液」を意味する。      ○ Cl-を「塩素イオン」と呼ばないこと。塩素イオンは「Cl+」の意味。正しくは「塩化物イオン」。      ○ 市販の濃塩酸の濃度は約12mol/Lである。 <問> およそ0.3mol/Lの希塩酸を100mL作りたい。濃塩酸は何mL必要か? またlog 3 ≒ 0.5として、上の希塩酸のおよそのpHを見積もれ。 <問> 正しい操作はどれか? ①水に濃塩酸を少しずつ加える ②濃艶酸に水を少しずつ加える ○ HXの酸化還元反応: 【重要1】 HXの酸化力は、H+の酸化力である。ハロゲン化物イオン(X-)には酸化力はない。 AlやZnを酸化することはできるが、Cuを酸化することはできない。 【重要2】 ハロゲン化物イオンは還元剤として作用することがある。 例1) HClはMnO4-イオンを還元する(高校で学習)。 <問> 上の化学反応式を書け。 例2) HBrやHIはCl2を還元する。→標準酸化還元電位の序列を調べよ。 【重要3】 酸の強さはHI > HBr > HCl > HFであり、還元作用はI- > Br- > Cl- > F-である。
【最重要】 酸の強さと酸化力の強さとは無関係
○ HFはガラス(主成分SiO2)を溶解するので、フッ酸をガラス容器に入れることはできない。 ○ 補足として次の問に答えよ。 <問> フッ化アルミニウムはフッ化水素と反応してテトラフロロアルミニウム酸イオンを生ずる。この反応 において、ブレンステッドの酸とルイス酸をそれぞれ示せ。 AlF3  +  HF  → AlF4-  +  H+
1-3 ハロゲンの酸化物とオキソ酸 ○ 酸化物には各種あり、ハロゲンは異常な酸化数をとりやすい。構造や結合についてはやや難解。 OF2、I2O5、ClO2についてテキストの記述を覚えること。 ○ オキソ酸: 例) 塩素の4種類のオキソ酸: HClO4(過塩素酸)、HClO3(塩素酸、単離できない)、HClO2(亜塩素酸、単 離できない)、HClO(次亜塩素酸) <問> 過塩素酸は非常に強いブレンステッド酸であるのに対し、次亜塩素酸は弱酸である。両者の酸の 強さの関係がなぜそのようになっているのかを考察せよ。 ○ オキソ酸イオンの構造: 講義で説明。 ○ オキソ酸イオンの結合、pπ-dπ結合: ClとOとの結合がなぜ二重結合に書かれることがあるのか、理解 すること。
<問> フッ素にはオキソ酸が存在しない。その理由を考察せよ。 1-4 ハロゲン間化合物とその構造: 混成軌道の名称とその形を覚えること。混成軌道は講義で説明。 XX':2原子分子、 XX3':sp3d混成(三方両錐型)、XX5':sp3d2混成(八面体型)、XX7':sp3d3混成(IF7のみ) I3-イオンは直線状分子。これはsp3d混成で説明できる。
  【混成軌道の説明】
例1:ClF3
Clの基底状態 3s           3p                    3d
Clの励起状態 3s           3p                    3d
               3個の不対電子がFと結合する。三方両錐のsp3d混成。2組の孤立電子対が2隅を占める。
左の3つの構造のうち、(3)の構造をとる。
例2: IF5
Iのさらに高い励起状態 5s         5p                  5d
    5個の不対電子がFと結合する。八面体型のsp3d2混成。1組の孤立電子対が 1隅を占める。→ テキストp.59, 表7.7のXX5'の構造。
例3: I3-
I3-における1個の共有結合と 1個の配位結合をもつIの 電子構造 5s         5p                  5d
1個の不対電子が1個のIと共有結合し、空のd軌道にもう1個のI-イオンの 孤立電子対が配位結合する。sp3d混成。3隅を3組の孤立電子対が占める。
*sp混成、sp2混成(平面三角形)、sp3混成(四面体)は有機化学でも出てくる。これ以外にsp3d混成、sp3d2混成を覚えておくと、無機分子の構造の推定に役立つ。
宿題 プリント中の<問>のすべてに解答せよ。
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( ⅰ)   データベースアメニティ研究所, C1ラボラトリー, 電気化学の庵, ハロゲン, 1200,(2003). ( ⅱ)   データベースアメニティ研究所, C1ラボラトリー, 電気化学の庵, ハロゲン, 2492,(2003). |
参考書籍…山形大学附属図書館 |
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( 11) 大喜多敏一, 森正樹, 金田和子著, ハロゲン, 大日本図書, (1973.9). |
( 12) 大喜多敏一, 森正樹, 金田和子著, ハロゲン, 大日本図書, (1973.9). |
( 13) 大喜多敏一, 森正樹, 金田和子著, ハロゲン, 大日本図書, (1973.9). |
( 14) 大喜多敏一, 森正樹, 金田和子著, ハロゲン, 大日本図書, (1973.9). |