アルミニウムの不働態皮膜に炭素、半導体、そのほかを塗布してその挙動を検討した。炭素を塗布すると電気が流れて、二酸化マンガンを塗布すると流れなくなる。 1.緒言 アルミニウムはリチウム電池の集電体として用いられ、電解液に腐食されない特性が要求される。しかしアルミニウム酸化皮膜表面に炭素やマンガン酸リチウムを接触させると、接触物質により異なるリーク電流が観察される。タンタル固体電解コンデンサでは、リーク電流を小さくするために、陽極酸化皮膜上に二酸化マンガンをコーティングする。(1)リチウム電池に用いられる活物質も金属酸化物であることから、アルミニウム陽極酸化皮膜に対して同様の作用を示すと考えられる。そこで、リチウム電池の電極作成法と同様に結着材を用いて異種物質を接触させたアルミニウム電極について、その陽極酸化挙動をサイクリックボルタモグラムによって検討し、電位掃引時のインピーダンスを併せて測定することによって、集電体酸化皮膜の修復と、リーク電流の関係について検討した。 2.実験方法 3.結果と考察 図1に何も接触させないアルミニウム(a)と二酸化マンガンを圧着したアルミニウム(b)のサイクリックボルタモグラムを示す。(a)の場合は-0.7V付近から電流が急激に流れ出し、その後電流平坦部が観察された。電位反転後は電流がほとんど流れず、皮膜が形成されたことがわかる。この電流平坦部の電流は電位掃引速度にほぼ比例した。(b)の場合は、+0.0V付近から電流が流れ出し、電流平坦部の電流値に相当する+2.0V付近で電流上昇が緩やかになった。その後、+5.5V付近から再び電流上昇が急激になった。電位反転後も若干電流が流れたが、定電位に保持すると電流は徐々に減少することから、皮膜も形成されていると思われる。しかし、電流増大時に気泡の発生を観察したことから酸素発生が並行して起きている可能性がある。 図2に(a)、(b)に対応するインピーダンス曲線を示す。(a)では、皮膜の成長と共に直線的にインピーダンスが増加した。(b)では、電位掃引開始時から既にインピーダンスが大きく、むしろ電位の掃引とともに減少してゆく。特に平坦電流値より電流が大きくなる4~5V付近で急激なインピーダンスの減少がある。このことはその電位から酸素発生が急激に起こり始めた可能性を示唆する。このような挙動は、二酸化マンガンのような酸素過電圧の大きな物質が接触した際のアルミニウムの陽極酸化反応と酸素発生反応の競合を示していると思われる 卒論1)。 表面技術協会 第98回講演大会2) 【学会】表面技術協会第98回講演大会@秋田県秋田市立花 和宏, 研究ノート, (2011).(1) 異種接触界面の導入によるアルミニウム陽極酸化皮膜の導電性発現機構-超高速イオン導電性-高木 泰彦, 修士論文, (1999).(2) 【学会】表面技術協会第98回講演大会@秋田県秋田市立花 和宏, 研究ノート, (2011).